来世なんていらない

龍の眼の色が完成した。
八月三十一日。夏休み最後の日だった。

本当に夢みたいな毎日だった。

宿題も応援合戦の準備も委員会の仕事もこなすのは大変だったけど、それはクラス全体がそうで、
少し前までクラスから浮いて泣いていた私にこんなにも協力してくれるなんて、あの頃の私なら思えなかった。

今日、教室に作業をしに来たのは各チームのリーダー達で、
私、真翔、進藤さん、千葉さん、高嶋さん、橋本くんだけだった。

参加するって言ってた子達は、夏休み頑張った打ち上げしようよってクラスメイトの提案に負けたらしい。

クラス全体の関係性も良くなってきている気がする。

作業というよりは今後のスケジュールの擦り合わせ、細かい箇所の修正をするつもりだった。

教室に入ったら千葉さんが一番最初に来ていて、パレットと筆を持って、龍の頭を教卓に置いて立っていた。

「千葉さん?おはよう、早いね」

「出来たの」

「うん?」

「龍の眼」

「ほんと!」

私は鞄を持ったまま、教卓に駆け寄った。

あの日は伽藍堂だった龍の眼に色が宿っている。

燃え盛るような、激しい紅。
角度を変えて見たら、周りの明るさにも左右されるのか、深い紫に見える。

全てが一色じゃなくて、眼のフチや瞳、細かく色が違うことが分かる。

「凄い…」

「どう?イメージ的に」

「ザワザワする」

「え?」

「気持ちがザワザワする!凄いよ千葉さん!」

「それ、OKってこと?」

呆れた笑みを浮かべながら訊く千葉さんに、私は何度も頭を縦に振った。

「どうやったの、この色」

「…九条さんの色」

「私、の?」

「私にただ生きたいだけだって怒った時。自分の傷を晒した時。私は変わりたいって叫んだ時。その時の眼を思い出した。闇があって、どこまでも深くて、でも生きたいって叫ぶ色」

「私の…」

「おはよー」

「はよー、お前らもう来てたんだー」

進藤さんと橋本くんが教室に入ってきて、少し遅れて真翔も到着した。