なにか不快なことでもあったのかと考えていたら、彼が「マリア」と私を小声で呼ぶ。
 幻聴かとも思ったけれど、アレックス様に目を向ければ、自分の教科書をトントンと叩いた。
 教科書を見せてくれるってこと?
 冷たい人かと思っていたけれど、違うのかも。
 やはり推しに優しくされると、いちファンとしては嬉しいもの。
「アレックス様、お優しいんですね。ありがとうございます」
 笑顔で礼を言うと、彼はなぜか複雑そうな表情をする。
 そんなアレックス様を見て、ルーカス様がニタニタ笑っていた。