「祖母は八年前に他界してしまったが、とても優しい人で、俺に元いた世界のことをよく話してくれた」
 ベッドに横になるマリアに毛布をかけてやりながら、祖母のことを話す。
 今日は階段からマリアが突き落とされるという衝撃的なことがあった。彼女の精神面が心配だったが、午後は俺がずっと彼女についていたこともあって、いくぶん元気になったように思う。
 それでも、夕食は少ししか食べなかったから、こうしてマリアを寝かしつけに来たのだ。
「どんな話をされたのですか?」
 俺の話に彼女が目を輝かせる。
「携帯という道具があって、遠く離れた人と話をすることができるとか。あと、飛行機という乗り物があって人をたくさん乗せて空を飛ぶことができるとか……言ってたな。俺には魔法の世界のような話で想像がつかなかったが」
 祖母の話はどれも奇想天外で、小さい頃は作り話だと思っていた。だが、大きくなってからは本当に祖母は異世界からやってきたのだと理解できるようになった。
 祖母の血のせいなのか、たまに異世界の夢を見るのだ。
 かなり文明が発達していて、人の移動手段はたくさんあって……。
 まるで時計仕掛けの世界のよう――。
 マリアが折り紙で飛行機や手裏剣を作って見せた時、昔俺も祖母に習ったことを思い出した。
 ――マリアの折り紙を見るまでずっと忘れていた。
「携帯も飛行機も私の世界にありますよ。ひょっとしたらアレックス様のおばあさまは、私と同じ世界からいらしたのかもしれません。私もお話ししてみたかったな」
 マリアが寂しそうな顔をするものだから、少し心配になった。