偶然、令嬢たちの話を小耳に挟んで思い知らされた。
 どんなにがんばっても、麗華はこの世界の悪役から抜け出せない。

(だとしても……)

「お待たせしました!」
 慌てたように小百合が入ってきた。

「ごきげんよう」
「あ、ご、ごきげんよう麗華さん、どうしました? 私なにか……」

 いつも文句ばかり言っている麗華がわざわざ来たのだ。きっと無理難題でも言われると思っているに違いない。

 小百合が緊張して、戸惑っているのがわかる。

「実はね、うちに怪文書が届いたの。八十八夜に私か小百合さんを襲うって」

 案の定、小百合は顔色を変えた。
「お、襲う?」

 バックから怪文書を取り出して小百合に見せる。

 推理小説さながら、新聞から必要な字をつなぎ合わせて急いで作ったものだ。
 でも、あながち嘘ではない。

【八十八夜 麗華 小百合 襲う】

 絶句する小百合に「これは我が家で調べるわ」と告げて、そそくさとバックにしまう。