ほたるの体内で育ち、蛹から羽化したむし。

 美しいブルーの翅の蝶に似たむしは、ほたるの頭上に青い鱗粉を振りかけながらふわふわ飛び回り、向尸井がふうっと息を吹きかけると、キラキラした粒子となって消えていった。
 幻想的で、淡い初恋の終わりみたいに、儚くも美しい光景だった。

『ほっちゃん、禍福は糾える縄の如しじゃ』
 ひいじいじの声が内側で聞こえた気がして、ほたるは胸に手を当てる。

 ここから、何かが始まる予感がしていた。

                       完