結弦が電話を終えてバスに戻ってくると、それぞれが思い思いに自分の時間を過ごした。 結弦は文庫本を読んでいて、その隣では怜が寝息を立てている。 わたしと美輝は最近の流行りについて盛り上がっていた。 地元で人気のお店の話をしていて気づいたことは、やはりわたしの記憶は鮮明に『今』を覚えている。 パワハラ上司に怒られていた日々は、全部夢だったのだろうか? 美輝と『今』の話をしているうちに、その記憶さえも徐々に虚ろになっていった。