美輝? 怜? なんでここにいるの? ていうか、ここは……どこ? わたし、また夢見てるの?

 両手で自分の頬に触れてみるが、確かに現実の感触がある。

 ということは、これまでのことが全部、夢?

 そんなはずはない。確かにわたしは慰霊碑のある場所からダム湖へと身を投げた。


「どうしたの琴音? もしかして寝ぼけてんの?」


 美輝が、きょとんとした声をあげる。


「ふふっ、昨日はあんまり眠れなかったのか?」


 隣にいる結弦が、こちらへ顔を向けて言った。


 結弦……? どうして、結弦がここに?


「ゆ、結弦……目が覚めたの?」

「寝てたのは琴音だろ? まるで俺が眠ってたみたいに言うなよ」


 ふはっと笑いながら話す結弦。


「琴音、ほんとに大丈夫? なんか顔色悪いよ?」


 美輝が心配そうに通路側から身を乗り出してきた。


「慣れないバスで酔ったんじゃねえのか? 美輝、水出してやれよ」

「はーい」


 怜に促され、美輝がごそごそとカバンを漁る。

 酔った? ううん、そんなんじゃない。

 これが現実だとしたら……そうだ、日付。今日は二〇二九年八月二十三日のはずだ。


 慌ててポケットの中のスマホを取り出す。

 それを見たわたしは、驚いて一瞬息を詰まらせた。