―― ✕✕✕✕年 ✕月✕日 ――


 ――心地よい振動。

 空調が行き届いたバスの快適なシートに揺られて、わたしはいつの間にか眠ってしまったらしい。


 どれくらい眠っていたんだろう。

 よほど熟睡していたのか、いまいち記憶がおぼつかない。

 しかし、まぶたの裏側にまで射し込んでくる夏の日差しは、また夢の世界へ戻ろうと踏ん張るわたしの睡魔を、容赦なく奪っていく。


「うぅ……ふあぁ……」


 自分だとは思えない奇妙なうめき声。

 重いまぶたをゆっくり持ち上げると、霞んだ記憶がそろそろと頭の中へにじり寄ってきた。


「おはよう、琴音! 目は覚めた?」


 後ろの座席に座っている美輝が通路側からひょいと顔を出し、わたしに声をかけた。


「ようやく起きたのか琴音。お前、口開けて眠ってたぞ」


 美輝の隣に座る怜が、座席の上から顔を出し、わざわざわたしの痴態を告げる。


 ――えっ?