命令教室

そう考えると、誰もあの文字を消すことができなかったのだ。


「イジメなんて最低」


私は小さな声で呟く。
そのイジメを強要するように書かれたあの文字も、最低だ。


「そうだよね。私は人をイジメるのも嫌だし、誰かがイジメられるのを見るのも嫌」


中学に上がってからは見えるようなイジメは少なくなったけれど、無知だった小学生時代にはよく目撃した。
誰かを蹴ったり、無視したり、物を隠したり。
そうして相手が困っていたり嫌がっている姿を見るのが楽しいときもあった。

思い出すと胸の奥に苦い気持ちが広がっていく。
イジメのターゲットだって誰でもよかった。
誰かがあの子をイジメようと提案すると、それが面白くて参加したりもした。
そんなイジメだから長く続くことはなかったけれど、私は確かにイジメに参加した時期があるんだ。


「あのホワイトボードは私達の関係を壊そうとしてるのかも」


10人しかいない生徒たちにイジメを強要して、人間関係をめちゃくちゃにする。
それが目的であるような気がした。


「でも、昨日のは違ったよね?」