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全員で玄関へ向かったときは微かな期待が胸にあった。
昨日はダメだったけれど、今日になれば状況は変わっているかもしれない。
みんなそう感じていたと思う。
けれど、結果は昨日と何も変わらなかった。
扉を開いて外へ出ようとすると、見えない力によって突き戻される。
昨日とは違って数人で同時に外へ出ようと試みたけれど、それも無駄に終わってしまった。
「やっぱりダメか……」
肩を落として教室へ戻ってくると、どうしてもホワイトボードの文字が視界に入ってきてしまう。
『イジメの日』
それは誰かをイジメる1日にしろという意味なのかも知れない。
それを無視していると、昨日のように誰かが消えてしまうのかもしれない。
考えていると全身が凍てつくように寒くなり、私はホワイトボードから視線を外した。
誰もなにも言わない、凍りついた時間だけが過ぎていく。
「とにかく、やってみるしかねぇかな」
重たい腰を上げるように言ったのは充だ。
充の視線は正志へ向いている。
正志は一瞬充から視線をそらしたものの、もう1度目を見合わせた。



