お湯を沸かすだけだけれど、人数分となると結構時間がかかる。
10人分のカップにスープの粉末を入れていくとき、つい一人分多くカップを出してしまっていたことに気がついた。
本来だったらここに先生もいたはずなんだ。
こつ然と消えてしまった先生のことを思い出して胸の奥がギュッと痛くなる。

それと同時に得体の知れない恐怖が足の先から這い上がってきて強く身震いをした。
先生は本当にどこへ行ってしまったんだろう。
最初はおおがかりなマジックに挑戦したのだと思っていたが、これは明らかに違う。
マジックでは絶対にできないようななにかが起こっていることは確実だった。


「できたよ」


人数分のスープを運び、自分も席に座る。
コンソメスープのいい香りが食堂内に立ち込めている。
何度か息を吹きかけながら熱いスープを飲むと、少しずつ気持ちが落ち着いてくるのが自分でもわかった。
やっぱり、食べ物の力は偉大みたいだ。


「今日は全員でここで寝よう」


スープを食べ終えてからそう言ったのは修だった。


「ひとりの部屋に戻るのは不安だろう? もちろん、男子と女子で部屋の左右に別れての雑魚寝になるけど」