全員で食堂へ移動して来たものの、食欲のある生徒は1人もいなかった。
みんな椅子に座ってうつむいたり、壁に背中をつけて座り込んだりしている。
時折すすり泣きの声を上げているのは彩と花のふたりだ。


「先生はいないし、外にも出られないし、誰にも連絡が取れない。最低な状況ってこと」


大きなため息とともに言ったのは未来だった。
未来の目にも涙が滲んでいるけれど、さっきよりも顔色はマシになっている。


「だけどなにか食べないと、気持ち的にどんどん弱ってく」


未来はそう言って面々を見つめた。
なにか少しでも食べた方がいいと言ってくれているのがわかり、私は立ち上がった。


「確か、インスタントのスープがあったよね」


精神的に追い込まれたせいで体がとても重たく感じられる。
だけど、スープくらいならどうにか食べることができそうだった。


「それがいいかもね。これからなにか作るような気力もないし」


未来の言葉に私は頷く。
料理をするような余裕は、精神的に残されていない。
どれだけ時間があっても、心が追いついていない状態ではなにもできない。


「それなら私も手伝う」


香も一緒になって食堂の奥へと向かう。