「でも今回は無理だよ。あの子たちだっているし……」


声をひそめて後方へ視線を向ける。
そこには教室内でも派手なグループに当たる4人組がダラダラと歩いている。
村上純子は金髪パーマで、腰に紺色のセーターを巻いている。
橋本未来は長い髪の毛を頭のてっぺんでお団子にして、よく日焼けしている。
古田充はひょろりと背が高いのに猫背で、歩くのもだるそうだ。
小高正志は、前を歩いている安田潤の足を後ろから何度も蹴って笑っている。
クラス内の問題児が4人揃っている合宿じゃ、告白のタイミングなんてあるわけがない。
私は小さく息を吐き出して視線を戻した。


「後は東と町田だもんねぇ」


香がくすくす笑ってふたりへ視線を向けた。
東花はまるまると太っていて動きが鈍く、列の最後尾を一生懸命ついて来ている。
町田彩は合宿前に自転車でこけて足を怪我したとかで松葉杖をついていて、花の隣をヒョコヒョコと歩いている。
どちらもクラス内でパッとしないタイプだ。
この合宿に香が参加しなければ、私も参加していなかったと思うけれど、修がいたことには心底おどろいた。
今回の合宿はそれだけでも来たかいがあった。
ぼんやりと歩いていると少し先を行く香が立ち止まって振り向いた。


「歩、早く行くよ!」


声をかけられて笑顔でうなづく。
なにはともあれ今日から一週間だ。


「すぐ行く!」


私は香のところまで走って追いついたのだった。