命令教室

私はゴクリと唾を飲み込んで正志と充を交互に見つめた。
ふたりはすでに覚悟を決めているようで、女子になにかをさせようとしている。


「点数を争うって、なんのこと?」


私はふたりを刺激しないように静かな声色で質問した。
ここで逃げ出しても、どうせ逃げ道はない。
捕まって、下手をすればターゲットにされて終わるだけだ。


「テストを用意した」


正志は短くそう言うと、視線で机の上を差した。
確認してみると先生が用意していたらしい、数学のテストが置かれている。
それを見た私は小さくうめき声を上げる。

よりによって数学のテストで点数を競うだなんて……。
数学は私が最も苦手とする科目だ。
これで純子や未来と張り合うなんて、できるだろうか?

不安で指先が落ち着きなく動く。
せめてふたりの平均点数でも知っていればまだ自信がついたかもしれない。
だけど、普段は香と一緒に行動している私にとって、ふたりの点数なんて知るタイミングはなかった。


「嫌だ……私やりたくない」