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廊下を歩いていても誰の姿も、話し声もしなかった。
起きたときに時間を確認するのを忘れてしまったし、少し寝すぎてしまったのかも知れない。
早足に階段を降りて教室へ向かう。

教室の戸を音を立てながら開いたとき、そこに異様な空間が広がっていることに気がついた。
思っていたとおり私は少し寝すぎてしまったようで、他の全員がすでに集まってきていた。
純子に未来、そして充と正志と修の5人がいる。

けれど教室内の空気は張り詰めていて、呼吸をするだけでも空気が壊れてしまいそうだった。
女子ふたりは今にも泣き出してしまいそうな顔をしていて、正志の手にはバッドが握りしめられている。
充が犯人探しのときに用意したものだとすぐにわかった。

だけどそのバッドは純子と未来のふたりへ向けられているのだ。


「お願い……助けて」


未来のか弱い声に我に返る。


「なにしてるの!?」


咄嗟に駆け寄ろうとした私を止めたのは一番近くにいた修だった。
修は青ざめた顔で私の腕を掴んだ。