命令教室

「今振り向いたら、きっと決意が揺らいじゃう。だけど、私はもう耐えられないの。今日の命令がなかったとしても、きっと耐え続けることはできなかった。だからこれは誰のせいでもない」


香の声が風に流されていく。
呆然と立ちつくていると後方から足音が近づいてきた。
振り向くと、そこに立っていたのは充だ。


「充お願い! 香を助けて!」


充ならきっと強引にでも香を引き戻すことができるはずだ。
フェンスの向こう側に行って、香の手を掴むことができればそれでいい!
でも……充は左右に首を振ったのだ。


「え?」

「助けられない」

「なに言ってるの!?」


香はまだそこにる。
手を伸ばせば助けられる距離に立っている!


「俺だって消えたくないんだよ!」


充が苦痛に顔を歪めて叫んだ。