命令教室

そのままスルスルとよじ登っていく。


「香、なにする気!?」


慌てて駆け寄ったときにはもう、香はフェンスの向こう側に立っていた。


「もう……嫌なの」


その声はひどく震えていて、泣いているのがわかった。


「そんなこと言わないで。きっと大丈夫だから」

「なにが大丈夫なの? 本当はなにも大丈夫じゃないよね?」


香の声は弱々しい。
攻めている感じはしないのに、私の胸に突き刺さってくる。


「私は香と一緒にここから出たいよ。離れたくないよ!」

「だけど今日、また1人消えるよ? それが私や歩じゃないとは言い切れない」

「でも……っ」


香の言っていることが正しくてなにも言えなくなってしまう。
今日の命令に失敗すれば7人のうちの誰かが消える。
生徒の人数は確実に減っていて、消える確率は高くなっている。


「香お願い、こっちを向いて!」


私の呼びかけに香はゆっくりと左右に首を振った。


「ごめん、できない」

「どうして!?」