やさしジュースにストローを差して差し出すと、香はそれを素直に受けとった。
一口飲んで少しだけ口角を上げる。


「おいしい」

「だねぇ。普段野菜ジュースなんてそんなに飲まないけど、たまにはいいよね」


ここで準備されていなかったら、滅多に選ぶことのない飲み物だ。


「うん。ありがとうね、歩」

「なに言ってんの? 私はただ夕飯を香と一緒に食べたかっただけ」


そう答えてチョコレートパンにかぶりつく。
甘みが口いっぱいに広がって、疲労が解けていくように感じられる。
それを見た香も菓子パンに手を伸ばした。


「人が食べてるのを見るとお腹が空いてくるよね」


同じ味のパンをかじって香が呟く。


「そうだね」

「食欲がなくても……お腹、すくよね」


香の声が震えた。
私はパンを食べるのを止めて香を見つめる。
香の両目からは大粒の涙がボロボロとこぼれ出していた。


「どんどん友達がいなくなって、悲しくて、なにもしたくないのに……お腹すいちゃうんだよね」


私は香の体を抱きしめる。