命令教室

「ほら、水」


ペットボトルを差し出されてありがたく受け取る。
冷たく冷えたペットボトルに触れただけで気持ちがほぐれてきた。
一口水を飲むと、砂漠の中のオアシスにたどり着いたような気分になって、もう止まらなかった。

500ミリのペットボトル半分くらいを一気に飲み干してしまった。
ペットボトルから口を離して再び大きく深呼吸を繰りかえすと、ようやく肺に空気が入ってくる感覚がした。
生き返った……。
素直にそう感じられた。


「俺たち教室に戻るけど、どうする?」


教室の中からでもグラウンドの様子はわかるし、これからまだ気温が高くなってくるからそれを考慮しているんだろう。
正志の言葉に修は頷いた。


「俺たちも教室に戻るよ。もう少し、休憩してから」


修はそう言うと、ふたりに気づかれないように私の手をそっと握りしめたのだった。