命令教室

不安な声を出したのは彩だ。
私は彩の背中に手を伸ばして優しくさすった。


「ホワイトボードには歩くなとは書かれてなかったから、大丈夫だと思う」


本当のところはどうなのかわからないけれど、今はそう言って彩のやる気を引き出すしかない。
昨日、潤のことを本気でイジメることができなかったことを思い出すと、走ることが正解だとも思うけれど、それは言わなかった。


「そうだよね、大丈夫だよね?」


彩がすがりつくように繰り返し聞いてくるから、私は何度も「大丈夫だよ」と、繰り返した。
花と彩には頑張ってもらわないと、今日もまだ誰かが消えることになる。
それだけは避けたい。

絶対に。
それから私達の過酷な時間が始まった。
山を切り裂いて作っているグラウンドは学校のグラウンドよりも少し広くて、一周するだけでも時間がかかる。
体感的には1周するのに1分。

このペースで100周するってことは、100分走り続けることになる。
ずっと同じペースで走れるわけじゃないから、3時間くらいはみておいた方がよさそうだ。