高いフェンスの切れ目から中に入ると広いフラウンドが姿を見せた。
ここへ来るまでは細い山道しかなかったから不安に感じていたけれど、そのグランドはちゃんと手入れをされているようでホッと胸をなでおろす。
グラウンドの奥には3階建ての灰色の校舎がそびえている。
といっても普通の学校ではなく、ここは宿泊合宿や林間学校で使われる施設だった。


「見てみて! あそこにキャンプファイヤーをした後が残ってるよ!」


山口香が私の腕を掴んではしゃぐ。
視線の先には太い木が交互にクマれた櫓がそのまま残されている。


「本当だ。でも、私達はキャンプファイヤーするとは聞いてないよ?」


先頭を歩く西牧先生の後ろ姿を見て私はそう答えた。
西牧先生は2年前に大清中学校へ赴任してきて、今年私達2年A組の担任になった。
まだ20代で、若い先生だ。


「西牧ならきっとやらせてくれるって!」


香はすでにキャンプファイヤーをやる気になっているようで、飛び跳ねて喜んでいる。
香がジャンプをするたびにポニーテールが揺れる。


「そしたらさ、きっと男の子ともいい感じになるよね?」


途端にニヤリと微笑む香に嫌な予感がする。
すぐに逃げようと足を早めたけれど、結局また香に腕を掴まれてしまった。


「今回は勉強の合宿だから、男の子と仲良くする暇なんてきっとないよ」