果実の熱病/その3
真樹子



私は火の玉で解散した後、ベッツに主だった者を集めていた

祥子以外のドッグスからは静美となつき、今は一旦ドッグスを出た久美…

それに私の部隊からはプロパー以外にも昨日、黒沼で宣告分を読み上げた二人とか…

総勢は30人近かったわ

さあ、ここでは現時点での認識の共有を図るか…


...


「みんな、今日はお疲れさん!まず、火の玉川原からは、サツに捕まらずに全員戻れたそうだから、報告するわ。あと、祥子は形式的だけど、南玉側に合田と横田を返すまでの人質で向こうに行ってる」

この場のみんな、私の言葉には食い入るようだわ…

さて…、ここで肝心なことを告げるか…

「…そこで火の玉での麻衣さんと横田によるタイマンの結果だが…、約20分の死闘を繰り広げた結果、通行人の警察通報で決着つかずとなった。現在、二人は相和会の人の車で川原を後にし、傷の手当てを受けているよ」

まずは、こう皆に告げたんだけど…

直後、想定をなぞるがごとき発言がね…

まあ、案の定だったわ(苦笑)

「…真樹子さん!それで、麻衣さんは優勢だったんですよね?相手の1年は聞いたところ、南玉連合にも属していなかった一般の1年坊ってことですが、そんなヤワな野郎、サツが来なきゃ潰してましたよね!麻衣さんは当然!?」

「当たり前でしょ‼事実上、こっちの勝ちよ!そうですよね、岩本さん?」

フン…!、ここの連中がこう突っ込んでくるなら、私の立場としてはリターンはきっぱりと伝える!

「いや…、今夜の火の玉に立ち会った人間は承知しているが、どう見ても五分五分…、もしくは攻撃の量、ダメージ度からしたら、麻衣さんの判定負けだと思う…」

「えー、そんな…!」

店内からはため息が、合唱のようなリズム感を奏でていたよ

...


「まさか…、あの麻衣さんが…。どうして‼」

わー、こいつら、何もわかっていない…

「いいか、みんな、よく聞けよ!…相手の横田競子はね、ただの部外者なんかで括れない女よ。知ってる人間も多いと思うけど、小学生の頃、紅丸有紀とひったくりを引っ捕まえて、新聞にも載った少女はあの子なんだよ‼…当時から快足の持ち主で、それ以降、紅組の集会では合田荒子と共に、中学上がる前から別格扱いでの常連だったそうだわ!」

あらら~~??

何かどよめいてるわ…

紅丸との件、知らない連中も案外多いってことか

ならばだ…

やはりこの機会だし、カモシカ横田についてはよく認識させておかないとマズイわね…