麻衣ロード、そのイカレた軌跡⑥/伝説のあの夏…、ファーストレジェンドは奇跡を生んだ!

壮絶の川原/その15
祥子



私は再び目を疑った

横田競子‥

あの普通の女子高生…

あいつは一体、何モンなんだよ!


...


川から再び土手下へ駆け戻る横田

それをパイプ棒を手にした麻衣が追う

しかし俊足の横田は、なんと気が付くと麻衣の木刀を右手に握っていた

ヤツも敵の武器を払い落とした位置を、しっかりとキャッチしていたのだ

さあ、こうなると戦いは振りだしに還った形になるが…

問題は体力の消耗度だ

今のこところ消費している運動量は横田が上だろうが、ここから見る限りほぼ五分に見えるな

ということは、こいつらの戦い、まだまだ終わりは先ということか…


...


「テメー、行くぞー!」

麻衣が川を上がったところで一声を放って、およそ7、8M先の横田めがけて突進していったぞ!

横田は腰を下ろし、木刀を両手で構えてる…

バランスは決して良くないが、リーチの長さを計算して威圧する術を心得てるようだ

突貫する麻衣もあの木刀のつき出しは目測で測り取れるはずだから、どうしても飛びこみざまでは条件反射的に躊躇せざるを得ないだろう…

言わば、横田は剣道の覚えがなくとも、向かってくる麻衣にプレッシャーを与えているんだ

「おりゃー!」

「うぉー!」

二人の掛け声が一斉にこだました…

”カキーン…!”

互いの剣がぶつかりあったぞ!

そして…

私の目はその直後の二人の姿を捕ていた…


...


今サシで戦っている麻衣と横田は、全くタイプの違う人間だろうが、そのベースは多くの共通項を持っているようだ

不屈の闘志と瞬間的に働く動物的カン、いざとなれば迷いを捨て去れる情け容赦のない徹底心…

麻衣の一撃は横田が下から剣をすくい打ちし、ヤツは相手の手からまたもや武器を放らさせた

その麻衣は大きくにつんのめり、横田の後ろに走り込んでしまった

そのスキに横田は腰を下ろし、なんと木刀を膝で真っ二つに割っていた…

なんとも早い!

さらに割れた一方をズボンの後ろのしまいこむと、もう一方を両手で正面を拝む形で握り…

「行くぞ、本郷ー!!」

その先はもう明らかだった 


・・・


ギザギザ状の木片があらわとなった木刀の切っ先を、横田は前方に立っている麻衣めがけてまっしぐらに全力疾走していった…

殺意…

その瞬間、再び私の脳裏にこの2文字がよぎった…