壮絶の川原/その1
祥子



「わかった…、横田の前面には予備隊20人だな…」

「ああ…、祥子は最後尾で全体を見回していてくれ。静美、お前はドッグスを半数に割って、土手下と上に振り分けろ。常に連絡のやり取りをできる配置をとれ。あそこの土手に座ってるのは、相和会の剣崎さんと能勢さんだよ。ああ、能勢さんは伊豆で一緒だったから面識あるわな。いざとなったらあの二人の指示に従え」

「わかりました…」

今日の麻衣は、静美に対して、指揮する者の”視線”の持ち方を伝授しているように見えるな…


...


「いいか、横田はおそらくその手にした鉄パイプみたいなもん、ブン回して突っ込んでくるよ。予備隊を突破したら、みんな手を出すな。ヤツが私の目の前まで着た時点の口上次第で、タイマンを受けてやる。後はもう戦うのみだから、それに集中するしかない。他は全部みんなに任せるよ。繰り返すが、何が起ころうとも、最後は全員きれいに撤収だ。後には何も足跡を残さず…」

麻衣め…

心中、期すものがあるようだわ


...


あれが横田競子か…

背は高く、足もえらく長いな

陸上やってると聞いてるが…

おそらく身体能力は高いんだろう

加えて、俊敏さとバネと持久力も…

盛んに屈伸に励んでるな…

しかし…、うーん…

どこから見ても、普通の女子高生じゃないか

あの子と麻衣のタイマンなんか、そもそも成立するのだろうか…

なんてったって、この麻衣は、あの赤い狂犬の足を金属バットでボキった”超”イカレ野郎だぜ…

本当に大丈夫なのか…

私は変な心配に襲われたよ


...


「静美、いいか…。麻衣の間合いをよく見ておけよ。引いて引いて、横にずれる…。それが基本だ。そして相手のスキを探り、瞬時に正面へ詰める。…ペースを掴んだと見たら一気だ」

はは…、何しろ私は実際に麻衣と戦っているからな…

「…だが、麻衣の攻撃は、打撃と密着の双方を自在に織り交ぜる波状型の攻撃パターンなんだ。一旦ラッシュに入ったら、相手に読みを与えない強みがある。しかも、麻衣はそれを計算してる。今日は木刀を手にして戦うようだから、相手への威嚇がスキを探るアクションになるだろう…」

「はい…。じっくり見させてもらいますが、役割もありますし…」

「ハハハ…、そうだな。まあ、バランスよくやればいいさ」

...

そろそろ時間だ

始まるな…

それにしても…

後ろからだが、麻衣のヒリヒリ感はなんなんだ

まさか…、殺気…