「あ」
 誰かと手が触れた。
 見ると、そこには自分より背の低い、超かわいい女の子がいた。
 黒髪のショートヘア。黒目勝ちなかわいい小顔。
 奈美ちゃんは、みとれた。
 「あ、ごめん」
 と、女の子が言った。
 「あ、すみません」
 女の子は奈美ちゃんをまじまじと見た。
 奈美ちゃんは、赤くなった。
 「ええ、かわいい」
 と、女の子が言った。
 え、かわいい?と奈美は思った。今まで、かっこいいとか、モデルさんみたいとかは言われてきたけど、かわいいとは言われたことなかった。
 「ねえ、アイドルになってみない?」
 「え」
 え、どういうこと?
 「ごめん、いきなり」
 「い、いえ」
 「実は私、ご当地アイドルやってて」
 「え」
 「知らない?」
 「も、申し訳ありません、存じ上げません」
 「ああ、そりゃあそうだ。全然有名じゃないもん。京都勝手に応援プロジェクト0っていうの」
 「申し訳ないです。存じ上げません」
 「い、いいの。全然有名じゃないから」
 「は、はい」
 「ねえ、あなたも入ってみない?」
 「え」
 「あ、ごめん、いきなりそんなこと言われても困るよね」
 「い、いえ」
 女の子はバッグから財布を出した。そうして財布からカードを出した。