「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。


 この国の王子である俺とハイウォール家のテレーゼは、生まれる前から魔法の誓約が交わされた婚約者である。

 我が国、筆頭公爵のハイウォール家は由緒正しい家柄であり、妃に迎えるのに、これほど適した令嬢はいない……のだが、容姿が醜い。と皆が口を揃えて言う。

 亜麻色の少しカールがかかった髪に青い瞳……そして、無数のそばかすに少し垂れている眉、唇は薄く、お世辞にも血色がいいとはいえない。

 美人……と褒め讃えるには、少々難アリである。

「あんな不細工な令嬢と結婚なんて……殿下、不憫です」
「僕だったら、家出しますね」
「あんな顔が四六時中ですよ。私なら耐えられません」
「未来の王妃があのように不細工では……」

 最初は、そこまで酷くないだろうと思っていた俺も、側近や学友達に散々言われ続けた結果、テレーゼの容姿がなんとなく気に入らなくなってきた。

 ある日、宰相の息子のバストリー・アルマンと執務室で仕事をしている時、ポツリとつぶやいてしまう。

「テレーゼって、やっぱり不細工か?」
「さぁ、どうなんでしょう」

 バストリーは興味なさげに答え、忙しそうに書類をめくっていた。

「テレーゼは俺の事が好きだと思うか?」

 容姿以外は完璧な淑女であるテレーゼ。

 完璧であるが故、俺に対しても、婚約者としてではなく、臣下として接してくる。

 不細工なクセに婚約者の俺に愛想笑いのひとつもしない。

 なんだか、それが俺をイライラさせるのだ。