王家は、あの昔話の兄に玉座を奪われるのを恐れていた。

 兄弟の情で処刑せず、国外追放にした弟の甘さは何代にも続く自分の子孫を怯えさせる事となる。

 長い長い年月の間、密かに兄の行方を捜していたのだろう。

 そして、やっと見つけた兄の子孫が、1番の側近で権力があるハイウォール家であった事に驚愕したに違いない。

 恐怖に慄いていたであろう国王の姿を想像しては、少し笑ってしまう。

 喉元に剣を突きつけられているのと同じような状況。
 1番信頼していた家臣が1番の脅威となったのだから。

 王家を狙う為、着々と準備をしていたハイウォール家は、王家といえど、簡単には手が出せないほど力をつけていた。

 国王は、数年前に亡くなったハイウォール家当主……お父様を上手く騙し、すでに性別がわかっていた生まれてくる子供の婚約を成立させた。

 王家からしか破棄できないという不平等な魔法の誓約も交わし、身の安全を確保したのである。


 この世に生を受けた瞬間から、
 婚約者という名の人質に、

 私は、なった。