「雪音!」




あまり時間はたっていない

相変わらず雨は痛々しく降り続いている

そんな雨音に混じって確実に聞こえた声


鈴本くんの、声



「鈴本くん!」



鈴本くんは一応傘は差しているけど、どんな勢いで走ってきたのか、かなりびしょびしょになっていた

ぜぇぜぇと肩で息をしながら

汗か雨かわからないけど、水がそのこめかみを伝う


「なんでっ…屋根のあるところにいないの…」

え?

はぁはぁという呼吸音に混じってそんなことを呟く


「こんな夜にっ…女の子が、びしょびしょで突っ立ってたら、危ないだろ」

あ、そうか。そうだよね

「ごめんなさい」

というか大丈夫かな
見たことないくらいゼェゼェだけど


「す、鈴本くん…大丈夫ですか」

「……はぁはぁ」

膝に片手をついて、もう片手で傘を差している


ブカブカの黒色のTシャツに、グレーのジャージ

薄い上着を羽織っていて、いつもより髪がボサボサ


「ぼさぼさだ…」

「…俺は大丈夫だよ…心配なのはそっち」

あ、そうだよね
助けてとか言ってるもんね

「とにかく入って」

鈴本くんが傘の中に私を引っ張り入れる


…汗だくだ

雨かもだけど