待ってる

待ってます


鈴本くんの少し焦った声

少し動揺した声


聞き慣れたあの人の声



偽物なのに

私たちの関係は偽物でしかないのに

それなのに彼は来てくれる


そこに特に深い意味はないかもしれない

女の子からの助けてという連絡を無視できる人間の方が少ないとは思う


でも少なくとも私は

あなただから頼る

頼ってと言ってくれたあなただから


無駄に固くて冷たい私のプライドを無視してでも

手を伸ばしてしまう



私たちの関係に、特別な感情は御法度だ

だけど今日だけは


どうか許してほしい



恥ずかしいほど情けない願いを
雨に濡れたスマホを握りしめて思う

そんな、偽装カップル1ヶ月とちょっとの今夜