偽恋人の恋愛事情




普段は絶対やらないけど、雑に靴を履いたので踵を踏んでいる

まあそんなことどうでもいい

もう我慢の限界だった

当てもなく夜の街を走る



今までは我慢できた

だって息苦しい生活しか知らなかったから

それが普通だと思っていたから


でも…鈴本くんと知り合い、偽恋人を初めて

彼の隣があまりにも息のしやすい空間だったから

彼があまりにも…私を簡単に受け入れてくれたから

私のあのクソジジイ譲りの酷い性格を…受け止めてくれたから


だから

「ああああああっ!」




水…かけてやった
顔面に…ぶちまけてやった

見たかあの顔!

あの鳩が豆鉄砲を食ったような腑抜けた顔!

「あっははは!ざまーみろです!ざまぁ…みろ」


うぅ

「お母さん…」

ヤバい
絶対やばい人になってる
情緒不安定すぎてやばいことになってる


落ち込む私に比例して雨が降ってくる

フィクションかよ…

と思いつつも

このひどい顔を隠せるのでありがたいとも思う



さあどうしようか

行く当てがなくなってしまったな