偽恋人の恋愛事情



夕飯時


夕飯は家族で食べることになっている

これはお母さんが生きていた頃の習慣がそのまま続いているだけであって特に意味はない

それに、私個人としては必要性も感じない


ただせっかく高見さんが作ってくれた美味しいご飯をどうしても美味しいと感じることができない

そんな窮屈なこの時間



「雪音」



あまり夕食の最中に口を開くことのない父親が私の名前を呼んだ

「はい」


「お前…今付き合っている人がいるのか?」

………は?


「今日雪音が見知らぬ男子生徒と手を繋いで帰っているところを晃が見かけたようで報告を受けた」



兄さんを見る

私を横目で見て少し口角を上げた

まるで馬鹿にしているかのように



「お前は…どこまで私を失望させるんだ」



お父さんは箸を置き、片手で頭を抱えるそぶりを見せる

大きなため息と共に私をゆっくり見る


「勉学もまともにできていないのにそんな戯けたことにうつつを抜かすとは何事だ
そんなことをしているからろくな成績も取れないんだ。わかっているのか雪音!」

バンっと机を叩く音

思わずビクッと肩を揺らした

「…は、い」

掠れた声で返事をする


「大体その男もなんだ!どうせお前の家柄や見てくれに興味を持っただけの低脳な男だろう!そんな馬鹿に騙されたと言うのか?いい加減にしなさい!」


……は?

低脳?
馬鹿?

拳に力が入る




『たまにはそうやって歳相応に悩んだり苛立ったりしてもいいのではないですか?』

『俺はお堅い会長より、今の会長の方が好きだわ』




「……っ」