「鈴本くんってよく笑いますよね」

「え?そうかな」

「はい」


笑うというか、笑われるというか

彼は私の話を聞いている時よく吹き出すように笑うことがある

彼のイメージに『笑い』というのはあまりしっくりこなかったので少し意外だった


「普通に笑うよ、人間だもん」

まあそうですけどね

「正直、鈴本くんってクールなイメージだったので意外でした」

「はは、なにそれ」


「やっぱり印象は印象に過ぎないんですね。この不思議な関係を初めて、私少し詳しくなりましたよ。鈴本くんのこと」

「…」

「これからもっと詳しくなるかもですね」

ニシシと歯を見せて笑う


ただ隣を歩いているだけかと思ったかい

人間観察は上手に人付き合いをしていくために必要な初歩ステップなのよ


「…それは俺もだよ」




「俺も会長の色んなことを知っていくよ。真面目だけど喧嘩っ早いところとかね」

なっ

「何か言いました?」

「いいえ?」



嫌味に下から鈴本くんを見上げると

少しだけ下唇を噛んで、微妙に口角を上げている

目は伏せ気味で長いまつ毛の作る影の下で
確かに柔らかい瞳が少し動揺したように左右に小刻みに揺れた


「それ、どんな顔ですか?」

よく聞かれる言葉を私が呟く


「……内緒」