「面白い冗談を言っているのは佐賀くんの方でしょう?」
「え?どういうこと?」
…
「あの日のこと、忘れたなんて嘘ですよね?」
「……」
タガが外れて暴走して忘れる
別にあり得ない話ではない
でも、佐賀くんは覚えている
覚えていて、忘れたふりをしている
決定打になったのは、さっきだ
「なんの話?」
「…さっき、私を見た時、会長じゃなくて雪音と呼びましたよね」
「…」
「あの日みたいに」
私の言葉に、彼の顔から笑みが消える
稀に見る真面目な顔になる
「…俺が覚えてるって分かってて、一人で会いに来ちゃったの?」
…やっぱりそうだ
忘れたというのは嘘だ
「ええ。私が解決すべきことなので」
「解決なんて言い方ひどいなぁ。俺が問題みたいじゃないか」
「それは失礼しました」
「…で?ご丁寧にフリにきてくれたの?」
…
「はい。私、楓くんが好きです。楓くんと本物の恋人になりました」
「…」
「だから、ごめんなさい。佐賀くんの気持ちには応えられません」


