偽恋人の恋愛事情



楓くんが後ろにいた私の腕を引く

そして私がずっと持っていた白い薔薇をそっと取った


「雪音には白い薔薇より、赤い薔薇の方が似合います」




楓くんは私を見てクールに笑った

私も、赤い薔薇の方が好きよ


「……そう、ですか」

春正さんが少し悲しそうに笑った


…春正さん


「楓くん」

楓くんから再び薔薇を取って春正さんの正面にゆっくりと立つ



「雪音さん」

「はい」

「…どうやら、捨てなければならないと言っていた気持ちは、捨てずとも…問題なさそうですよ」

「…」

「僕は…その事実を素直に喜べませんけどね」


春正さんは少し目を伏せた


「…春正さん」

「…はい」

「色々と、ありがとうございました」

「いえ…こちらこそです。あなたとお話しできて本当によかった」




あなたは素敵な人だ

でも、私には…私にとってもっと素敵な人が、他にいる


「あの、これ。せっかく買っていただいたけど…お返しします」

白い薔薇を差し出す


それを見て、ゆっくり目線を上げる

「……持っていては、くれないのですか?」



「この花は、私には少し、綺麗すぎるみたいです」



「……あなたが持てば、どんな花も霞むと思いますけどね」

そう言って、私から薔薇を受け取った