偽恋人の恋愛事情




「もう邪魔やお前、どっか行け」

「は、春正…」

「聞こえんかったか?…どっか、行け」

「………はい」


わ、わお


逃げるように家の中に走り去っていく壇さん

その背中を無言で見つめる



「……」

「……」

「……」

「……」


お父さん、楓くん、私、春正さん

ヒュオーと潮風の吹くなか、呆然としている



「取り乱してすみません」

振り向いた春正さんはさっきまでとは打って変わり落ち着いている

「「・・・」」



「雪音さん…あの…すみませんでした」

あ

「い、いえ…」

「あの父親にはあとでしっかり…灸を据えておきます」

ほ、ほどほどに…


楓くんも拍子抜けしたようで、私から手を離して固まっている


「鈴本さん…でしたか?」

「え、あ、はい」

私から楓くんに目線を移す春正さん


「彼が…雪音さんの言っていた人ですか?」

…

「はい」


春正さんは殴り飛ばした時に捲れたスーツを直しながら楓くんに近づく

楓くんは思わず少し身を引いた


「はじめまして…雪音さんとお見合いをした壇春正です」

楓くんはハッとして同じようにスーツを少し直して向き直った

「鈴本楓です」