楓side



『雪音さんとお見合いさせていただいたものです。ワケはまた話します。とにかく雪音さんをこのまま失いたくなければ来てください』


……


「…あ"?」


そんな理解不能のふざけた連絡が入ったのは

朝からものすごく不機嫌だった今日の夕方だった




今日は雪音がお見合いとかいう会食に行っている日

朝から目覚めは悪いし、イライラして何もかもうまくいかなくて

ただリビングのソファの上でダラダラしていた


…もし、雪音が相手を気に入ってしまったらどうしよう

もし、相手がものすごくいい奴だったらどうしよう


帰ってきてくれなかったら…どうしよう


はあ…

だめだ、何もする気になれない



そりゃさ、断るのに一番効率的な方法だって言う理屈はわかるよ

でも…俺彼氏じゃん

いや偽物だけどね?


なんなんだよ

なんで平気な顔してお見合いに行くわけ!?





いや

偽物だからか


あの人は真面目な人だ

きっと俺との関係に線を引くためなのかもしれない


…アホだな

本当にアホだ


偽物なんて言わなければよかった

最初から素直に付き合ってくれって言えばよかったんだ


でもそうだったらきっと…雪音は受け入れてくれなかっただろうから





俺は弱虫だ

呆れるほど弱いクズだ