『俺は、雪音に傷ついてほしくないからさ』



うん

「私も、楓くんには傷ついてほしくないです」

だから…言うとおりにしよう


『っ…』

「?」

『だ、だからさ、俺の目の届かないところでは、自分で保身して。何も…ない、ようにさ』



「うん」



楓くんは

私を大切にしてくれている


果たしてそれがどこから来る感情なのか

偽物でも恋人だから、近しい人だから、逃げ口だから

そう思ってくれているのかもしれないけど

それでも大切にされていることを知っているから

彼の一言に

こんなにも苦しくなるのだ


届かない人に恋をして

届かない手を伸ばして

それでも彼がその手を蔑ろにしないから

だから苦しくなるのだ

未熟者に、なってしまうのだ



…ああ

「楓くんに会いたい」

そんな本音が口から溢れていることを…知らないまま

『………俺もだよ』

そんな、電話口では聞き取りづらい彼の本音にも…気付けないまま



私は、私たちはこの中途半端な関係に甘えている

そんな

偽恋人2ヶ月の今日この頃