偽恋人の恋愛事情




『…』

「…」


私がお見合いを承諾した1番の理由は

楓くんとの関係、偽恋人の恋愛事情の問題だ


好きになってはいけない人を好きになってしまった


お見合いすれば

少しはこの惨めな感情を濁らせることができるかと思ったのだ


「だから…お見合いは受けます。でもそれだけ。私はそのあとその人とどうにかなるつもりはありません」

はっきりとそう言った

『……わかった』




たとえどんなに家族との関係が辛くても、楓くんがいるからと
逃げ口はあるんだと辛いことから背を向けてきた

でも…一番私が背を向けなければならなかったのは

楓くんだったのだ


この関係にはいつか必ず終わりがくる

だったら一刻も早く

楓くんとの間に線を引かなければならない


このお見合いは、そのチャンスなんだ

他の世界をみるための

……チャンス、なんだ…



『来週ってことは、もう夏休み中は帰ってこないってこと?』

「……そう、なります…けど」

『…』

「あの」

『ん?』




「お見合いが終わったら、帰ってもいいですか」


…背を向けなければならないなんて言っておきながら

やっぱり私は未熟者だ


「楓くんの家に…帰りたいです」


夏休みだけ

夏休みだけでいい

どうかお願い


『うん…帰っておいで。待ってるから。どんだけ夜遅くなっても、起きて待ってるから』

……


「ありがとう」


本当に…好きです



『えっ?』



「え?な、なんですか?」

『え?あ、いや?なんでも、ごめん、こっちの話』



『そ、それじゃまた』


誰か来たのかな

焦ったように電話を切られてしまった


まあいいか