偽恋人の恋愛事情




この父親は絶対頭がおかしいと思う

私が激怒した理由を忘れたのだろうか


…と思っていたが


忘れたわけではないようで

珍しく緊張しているのか、額に汗を滲ませながら泳ぐ目で私をチラチラと見る

保険でもかけているのか、私のコップの水がなくなったこのタイミングで話した


だが箸は手元にあるぞ

投げれるぞ

流石に投げないけど



スッと箸を置いて父親をまっすぐ見る


「お父さん」

「な、なんだ」

「…私がそれをすんなり承諾すると、お考えですか?」

「…」



兄との作戦はこうだ

まずシンプルに、私の意思を伝える

嫌だと、行きたくありませんと。

それで父親が折れると思わないから、その時は…



「いや…承諾しないだろうと思っていた」


……え?


父親の思わぬ言葉に拍子抜けになる

兄も同じように予想外の回答に目を丸くして私を見る


は、早くも想定外の事態だ

作戦が狂う


父は目を伏せている