「雪音か」
っ…
そっといけばバレないんじゃね
と思ってたけど父親もそんなにボケてなかった
「…」
特に返事をせず、足を止める
「戻ったのか」
…
「一時的にです。すぐ高見さんのところに戻ります」
冷たい音で淡々と返す
実際は楓くんのところだけど
父親はいつも通り良い椅子に腰掛けて、背中側にいる私の方を向かずに真正面を向いてしゃべっている
「…雪音、勉強はしているのか?」
…ははは
さすがだよね
この頑固親父
「ええ、してますよ。とっととこの家を出て大人になりたいので。だからご心配なく」
思わずカッとなってそんな風に返してしまう
やってしまったと思いつつも自分の部屋へ向かうため、歩度を早めて歩き出す
しかし
「あまり高見さんに迷惑をかけるなよ」
…う
それは…それはまあ
正論ですよね
親として面倒見てもらってる人にそういう心配をしてこんなことを言うのは…普通だよね
ぐうの音も出ないですけど
でもやっぱりむかつく
こんなことになったのは間違いなくあんたのせいだ
いや、まあ1割くらいは今まで何も言えなかった私のせいでもあるけど
足を止めて少し父親の方を見返れば
父親も同じように少しだけこちらを見ていて目が合ってしまう
うえ
「…わかってます」
「…そうか」


