「…お兄さんから?」

「はい」


そう、佐賀くんのことやら同居のことやらでいっぱいになって忘れていたあの家族のことだ

今になってようやっと連絡が来たのだ


雨の夜に飛び出した時も、家出ぶちかまして帰宅しなかった時も

うんともすんとも言わなかったあの家族どもだ


「なんて?」

「…今何してるって」

彼氏かよ
気持ち悪っ


「…俺とイチャコラしてますって送る?」

「なんですかそれ」

「挑発」

「ふふ、いいですね」

なんて冗談を言ってくれるから、変に落ち込まなくて済む


「無視します」

「いいの?」

「…はい」



「いつかは、向き合うときが来るよ?」

「…はい」

それはわかってる

「俺は、雪音が抱えるものを一つでも減らしたいと思ってるけど」


……

「確かに…今なら…楓くんもいる」

隣にいてくれる


「…」



ぼそっと言った私の言葉に片手で頭を抱える楓くん

「どうしたの?」

「…いや、ほんと、罪だよね雪音って」


えっ

「何がですか!」

「なんでもないよ、言ってもどうせわからないから」

はぁ??


と、まあ

彼に対する文句と言えば

今みたいに、何か言いたげなのに頑なにそれを言おうとしないことだ