「楓くんのそばにいると、安心するよ」

そんなことも知らないで罪な人は優しく笑う

俺がこの笑顔に何度苦しめられたか

君は想像つかないだろうけど


少しは、安易に花を撒き散らす雪音にも、非はある

だから


「…雪音、ごめん、ちょっと許して」

「え?」


ふわりと、脆いように見えて決してそうではない彼女を抱きしめた

香るのは爽やかな甘い香り

目がチカチカするような星の粉が降ってるみたいに


自分でも気づかないうちに感じていた恐怖がスッと軽くなっていく


この恐怖はきっと

雪音を誰かに盗られるもしれないと

佐賀に何かされるかもしれないと

そして、自分が無謀な恋を自覚してしまったと

そういったところから芽生える恐怖だろう


でも





俺の背中に添えられる雪音の細い腕

抱きしめ返してくれた



何も考えられないほど


今この時間が

最高に、暖かい