偽恋人の恋愛事情






ピリピリと肌を指す痛い空気

私の前で楓くんを睨む佐賀くん

少し離れたところで佐賀くんを睨む楓くん


「会長」

え、は、はい

「楓とは偽物なんだろ?」

「えと…はい」

「だったら忠告するけど、これ以上ここにいると、きっと後悔するよ」



「偽物であり続けるんならすぐ出て行かなきゃダメだ。だからここにはいないで」

……



「行く当てもないのにですか?」

「…え?」

「こんなめちゃくちゃで生徒会長でも品行方正でもないありのままの私を受け入れてくれる人は、ここにしかいないのにですか?」

あんな家

戻りたくなんてない


「佐賀くんの言っている事、何も間違ってないと思います。きっと楓くんと出会う前の私ならそう言いましたし、こんな事死んでもしません」

「…」

「でも、楓くんと出会って知ったんです。世の中には道理的でないこともあるという事。五里霧中で突っ走っても得られるものがあるという事。そしてそれらがすごく心地のいいものだという事。
全部、楓くんが教えてくれた事です」


「雪音…」

ピリピリしていた楓くんの視線が柔らかくなった気がした



「心配してくれてありがとう。佐賀くん」

「っ」

「でもずっとここにいるわけじゃないし、いつか向き合わなきゃいけない時は来るけど…今は少し、休憩したいんです」

「会長…っ」

「どうか許してください」