そして、彼女の笑みの違いや表情の変化

細かい仕草の癖まで知っていくにつれ、


……彼女の"本当の笑顔"が見てみたい。


なんて気持ちが芽生えていた。



◇◇◇



ある日の塾からの帰り⎯⎯⎯


いつもと違う道を通ると、あの公園があった。


四阿と小山に垂れた滑り台に

砂場しかない簡素で静かな公園。


そこでベンチに座り、夕焼けを眺める瑠花を見つけた。


一人だし、話しかけるチャンスだと思い近づくが

近づくごとに見えてくる彼女の表情に、僕は足を止めた。


それ以上近づくことも


目をそらす事も出来なくて


ただ、立ち尽くしたまま見つめた⎯⎯⎯。



その顔には、いつもの天真爛漫な笑顔はなく



……全くの "無" であった。



あんな表情を削ぎ落とした『無』な顔が

人間にできるものなのかと思ってしまうぐらいに。