付き合ったのだって、きっとそう。
私が可哀想に見えたんじゃないの…
気を使って、言った言葉なんじゃないの?
それかいいように使えるやつだとでも思ったの?


今ナナミの近くにいたら、どんどん自分が嫌な人間になる。


だから離れる。


「ナナミちゃーん!」

私の方には目もくれず、ナナミはチームの子の呼び掛けに答えて、どこかへ行った。



驚いた。

涙が一滴も出ない。

まるで感情が無くなったみたいに。


頭が回らない。
体も動くのが止まる。

全ての時が止まっているような感じ。


空っぽな、私。

「ニカ先輩!!」


「…美咲ちゃん。」


右の方に視線を向けると、走ってきたのか息が上がった様子の美咲ちゃんがいた。

「どう…した、の?」
「こっちのセリフです!!」

リレー練習の時はそんなことが無かったのに、前髪が真ん中でぱっくり割れていて、きれいな巻き髪が乱れていた。

「ニカ先輩、戻ってこないから!志崎さんは戻ってくるし、何かあったのか凄く心配になっちゃって…」

少し目をうるうるさせている美咲ちゃん。
私は何をしていたんだ、と心の中で呟く。


「ニカ、先輩?」
「ごめんね。心配かけて。」

「…戻りましょう。」
「うん。」