「須藤さん、もっと大きく腕を振って、1歩1歩を大きくー」
「はいっ」

授業の体育の時間はほとんどが体育祭の練習になった。
先輩方に教えてもらいながら、着々とタイムを縮めていった。
分かったことは、決して早くはないけれど割と自分は走ることが出来るということ。

「先輩いい感じです!」
「美咲ちゃんありがとう!」

今まで出来る人と比べていたけど、少し自信を持って走れるようになっていた。


「ニカー!、安在さんもー!」
「志崎さん!」

他の種目の練習場所からナナミが走って私たちのところへ駆け寄ってくる。
ナナミは私の気持ちを何にもわかってない。
いつもと変わりなく近寄ってくるのが、私は嫌だった。

「調子どう?」
「いい感じです!ニカ先輩もそうですよね!」
「あぁ、うん。」

私は美咲ちゃんに仕方なく相槌を打つ。
ナナミも美咲ちゃんも私の様子がおかしいことに気づいたようで、3人の空気が重くなる。

私がこんなに意地張ってないで普通にしていればいいはずなのに…


「ニカ。来て。」

気づくと私はナナミに腕を掴まれていて、そのまま引きずられるかのように私はどこかへと連れていかれる。


「ニカ先輩?」


後ろから美咲ちゃんの声が微かに聞こえたけれど、ナナミの腕に込めた力が強すぎて後ろに引き返すことは出来なかった。