あれは、プリントじゃない…


「こんなところで、おかしいですよね。歌ったり、発声練習したり…」
「そんなことないです!」

寧ろ、綺麗すぎてプロみたいだった。
普段の可愛らしい安在さんらしさもあるけど、それでいて大人びたような声。

「純粋に、私はとても、素敵だと思いました。」
「ありがとうございます!…」

安在さんは何かを言いかけたところを無理やりとめた。


「どうしたの?」

私の問いに、不安げな顔をしながら何かを訴えるように言葉を発する。



「私、声優になりたいんです…!」



勇気を振り絞った様子で私に自分の夢を言う安在さん。
私は黙って安在さんが話すのを待つ。


「アルバイトを始めたのも、養成所に通うためなんです…。私の夢のために、親に負担をかけたくないんです。…中学生の時から通い続けてて、これからは自分の夢は自分で叶えてやるんだって気持ちでっ!えへへっ、おかしいですよね…」

「そんなことないです!」


安在さんはそんなに将来を見据えて、小さな頃から努力していたんだ。


「私にはそんなものないので、安在さんはすごいですよ。とても素敵です。」


私には到底真似出来ないことだ。

安在さんはキラキラした眼差しで、背後に隠していたものを私に見せてくれた。