「じゃあね!」

ナナミさんはよく笑う。
子供みたいな無邪気さも持ち合わせた、素敵な笑顔。

何か壊れてしまいそうで、聞けなかった。

なのに…



(私、知りたい…)


こっそりナナミさんの後をついて行ってしまった。

(この辺りは…)


来たことがない場所だった。


低い屋根、形は四角い。
家族連れやご老人が出入りしている。
賑やかだ。

ナナミさんは出入口とは違う方向に向かっていく。

足音を立てないように、小さな道を続いて歩いていく。

こんなこと、人生初だ。



「君、面接希望の子?」

「面接…?」

後ろから声が聞こえ振り返ると、父と同じ年くらいの男性が立っている。
この人はお手伝いさんなのか、エプロンを付けている。

男性のお手伝いさんは珍しい。
しかもなぜここに?

面接とは…?

どこの受験会場のお話なのか。



「ニカ!?」

また後ろを振り返ると、ナナミさんが男性と同じエプロンを付けている。

なぜ、なぜー!?


「ナナちゃんの友達なのかい?」
「そうなんですよーケンさん。」


どうやらこの男性、ナナミさんの知り合いのご様子。

「で、ナナちゃん。この子はどうする?」

私とナナミさんの目が合う。


「ケンさん!」