「お母様!お母様、体調が…」
『ごめんね。』
「いいよ…無理に話さないで…」
私は少し近況を話し、電話を終えた。
お母様に無理をしてほしくなかった。
私が今、お母様の傍にいられたら…
お母様はあんな人を恩人だと思えるなんて、どこまでも凄い人だ。
私はそんなこと到底思えない。
今のこの状況ですら、抜け出したい。
お母様みたいになれる時が来るのかな…
私は目を閉じた。
疲れていたはずなのに、眠りは浅かった。
夢を見た。
幸せそうな夢。
ウェディングドレス姿の女性が2人。
1人は黒髪で、もう1人は私の髪色に似ているブラウンみのある色だ。
目元はモヤがかかって見えないけれど、口元でわかる。
2人は幸せなんだということ。
2人はキスをしてから、私の視界からどんどん遠ざかっていくように歩いていく。
私の足は動かない。
ただ幸せそうな彼女たちを羨むことしか私には出来なかった。
次の日、1度大声を出して落ち着いたのか、お父様はスビンをつれ仕事へと向かった。
恐らく仕事という名の接待だということは察した。
私は2人が出ていくのを確認したあと、アルバイトへと向かった。
眠りが浅かったせいで、頭が少し重かったがなんとか歩き出した。



