私の家のことだ。
いくら欲しいと言えば、きっとお金は貰える。
わざわざアルバイトをしなくたって済む。
でも、自分で一生懸命稼いだお金でデート、は憧れていた普通の暮らしのような感じがした。
シフトの回数を増やした。
今年の夏は忙しくなりそうだ。


ナナミがテーマパークのチケットや、電車での行き方など調べてくれたおかげで準備は完璧だった。
ナナミから受け取った、キャラクターがたくさん書いてあるチケットを見ているとワクワクが止まらなかった。

「そんなにチケット眺めても、増えないよー」
「分かってるよ」

私を見てナナミは呆れたように笑った。

夏休みはもうすぐだ…










「ニカさん、」
「何でしょうか?」

一学期を終えたこの日。
双葉さんは改まった様子で、夕食を食べる私に声をかける。


「お父様とお母様が、帰ってこられます」


毎年のことだ。
驚くことはない。
夏休みになると私が海外に行かされるか、両親がこちらに来るかのどちらかがお決まりだ。


「スビンさんも、ご一緒にだそうです」


思わずご飯を口に運ぼうとした手の動きを止めた。

「なぜ、彼が?」
「はい、愛しのニカさんにお会いしたいと、ずっと申しておられたそうですよ」